院長コラム 『眼科医が考える多焦点レンズの選択時の注意点』

『眼科医が考える多焦点レンズの選択時の注意点』

白内障手術における多焦点レンズの知識は、ネットでだいぶ調べることができるため、患者さんご自身で調べられて来院されることがとても増えてきました。

当然なのですが、多くの患者さんは、多焦点レンズのメリットばかりを感じておられ、夢のようなレンズと思われています。しかし、現実としては当然デメリットもあるのです。

なので、当院ではデメリットもはっきりと正確にお伝えした上で、一生に一度の白内障手術の機会をより満足のいく機会として欲しい、白内障手術をやって良かったと思って欲しいと思っています。

そのためにレンズ選択の説明に加えて、こちらからも患者さんに質問させて頂き、より厳密に適応を決めています。

たまに『先生は、なぜデメリットばかり言うのですか』と質問されることがあります。これは多焦点レンズを正確に知って欲しいということ、手術をされた後で後悔しないで欲しいという思いがあるからなんです。そう思うと、つい厳し目な話になってしまうのです。

多焦点レンズをご希望で来られた患者さんの12割は、お話を伺った後に単焦点レンズをお勧めさせて頂くケースもあります。しかし、多焦点レンズも年々進化し、以前に比べて適応する患者さんが増えてきているのも事実です。

以下に多焦点レンズ説明時に特に僕が意識してお話し、質問する内容を記載します。

❶ご自身は、性格的に几帳面である、物事を分析することが好きである、一切妥協はしたくない性格である。

❷夜運転することが多いですか?

夜運転していて対向車のライトが眩しく感じたりするのは、嫌ですか?

❸色の違いや色のコントラストを比較する仕事をしている。もしくは、色味が大切な趣味をお持ちですか?

❹網膜症、緑内障、レンズて矯正できない乱視のある方、LASIKをされていますか?

上記に当てはまる方は、眼科医としては特に慎重に多焦点希望を確認する必要があると思っています。時に単焦点レンズをお勧めすることもあると思います。❹に関しては、程度にもよりますが、多焦点レンズの効果を十分に得られない場合があります。

では、次にその理由をお話しします。

選ぶ多焦点レンズによって、その程度は若干異なりますが、共通して言えることとして以下のことが言われています。

色のコントラスト感度が落ちる

 色のハッキリとした鮮明さが落ちると同時に色味も変化して見えます。

少しモヤっとした見え方になり、クッキリ感が多少失われます。

夜間の照明が眩しく感じます。

上記の症状は、例え眼鏡をかけたとしても改善しません。また、よくある質問として、もし合わなければもう一度手術かできるのかという質問です。再手術は、不可能ではないが、とてもリスキーな手術になるので手術機会は一度と考えてくださいとお話しています。

しかし、多焦点レンズの種類によっては上記の症状の程度が多少少なくなる場合もあります。また、上記の見え方を納得され、全てを引き受けることを同意されているのであれば、それは勿論尊重したいと思います。

見え方に関しては、言葉で説明するよりも画像でお見せする方が伝わりやすいので、来院時にはイメージ画像をお見せしています。

慎重に選ばれれば、『多焦点レンズは、人生もハッピーにしてくれる』と、手術をした患者さんの笑顔を見ていて感じます。だからこそ、是非、しっかりと納得のいく決定をして欲しいと思っています。

『うれしい、楽しい、大好き、きっと上手くいく、ついてる』良い言葉を使って、自分も周りの人も幸せにしちゃいましょう。

今日も一日いい日になりますように。