多焦点眼内レンズを使用した白内障手術について、特徴や種類、比較、費用についてご説明します。

多焦点眼内レンズとは?

多焦点レンズは、目に入る全ての光量(=光の情報量)を複数の焦点に分配することで、ピントが複数合うとても便利なレンズです。しかし、全ての光量が1箇所の焦点に集まる単焦点レンズとは異なり、複数の焦点に光量が分散されるため、1つの焦点で得られる光量が少なくなります。そのため、多焦点レンズの見え方のクオリティーは、単焦点レンズより多少低下します。

多焦点レンズにむかない人ってどんな人?

多焦点眼内レンズに向かないと言える方は、大きく分けて4つに分類されます。

①進行した緑内障や網膜の病気がある方:レンズの効果を実感できない場合があるためです。
②色を扱う職業の方:色のコントラスト、鮮やかさが低下するため。焦点深度拡張型ならほぼ単焦点レンズと変わらず良好です。
③几帳面・繊細な方:見え方の欠点が気になってしまうため、不満が多く出てしまうためです。
④細かい作業をされる方:見え方のシャープさが若干なくなるためです。

多焦点眼内レンズに適応される選定療養って、どんな制度?

厚労省に認められた多焦点レンズを用いた白内障手術は、選定療養といって保険医療に追加費用(自費)を支払うことで、保険外診療が受けられる制度です。

多焦点眼内レンズの長所・短所・適応

●長所:
メガネが完全に不要とはいきませんが、術後、メガネの使用頻度を減らすことができる点です。
●短所:
①夜間に明るいライトを見ると、周りに光の輪が見える。➡ハロー
②光がにじんで見える。➡グレア
③薄い膜が一枚かかったように見える。➡waxing 
④色の鮮明度、くっきりハッキリが低下します。➡コントラスト感度の低下
●適応:
上記①-④の短所があるため、見え方に正確性を求めるような緻密な作業を行う職業の方、色を扱う職業の方、また几帳面で、何に対しても正確性を求める方には、多焦点眼内レンズは向かないとされています。
上記の短所を受け入れることのできる方であれば、とても有意義なレンズと言えます。
※上記の欠点がほぼ解消されている多焦点レンズが、焦点深度拡張型レンズとなります。

多焦点眼内レンズ 大きな分類

多焦点眼内レンズは、大きく分けて3種類あります。

①連続焦点:近方から遠方まで切れ目なく連続して見えるのが特徴。平均点の高い見え方を希望の方に。
②3焦点: 40cm,60cm,5mなど3つの距離が特に視力が良好。用途を際立たせた多焦点。
③焦点深拡張型:ハロー・グレアが細小、コントラスト最良。色調・夜間運転にこだわりのある方に。近方は必ず眼鏡が必要です。

多焦点眼内レンズの種類と見え方の特徴

多焦点レンズの種類 タイプ グレア
ハロー
コントラスト 見え方の特徴
A.オデッセイ
B.   〃  乱視用
連続焦点 軽度 切れ目なく、連続して見える連続焦点レンズ
左右で度数を工夫すると近方から遠方まで良好
C.パンオプティクス
D.   〃  乱視用
3焦点 軽度 特に中間・遠方を重視した3焦点レンズ
40cm,60cm,5mがとても良好
E.ジェメトリック
F.   〃  乱視用
3焦点 軽度 特に遠方を重視した3焦点レンズ
中間.手元はまあまあ
G.ジェメトリックplus
H.   〃  乱視用
3焦点 軽度 特に近方を重視した3焦点レンズ
中間はまあまあ
I.ビビティー
J.   〃  乱視用
焦点深度拡張型 極軽度 ◎◎ 鮮やかな色調と夜間運転にこだわった焦点深度拡張型レンズ
K.ピュアシー
L.   〃  乱視用
焦点深度拡張型 極軽度 ◎◎ 鮮やかな色調と夜間運転にこだわった焦点深度拡張型レンズ、コントラストは最良

多焦点眼内レンズの特徴比較

多焦点レンズの種類 近方 中間 遠方 夜間運転 お薦めな方
A.オデッセイ
B.オデッセイ乱視用
優れたバランスを希望の方に
遠方から近方まで落ち込みが少ない
C.パンオプティクス
D.パンオプティクス乱視用

×
仕事でパソコン普段アクティブな方に中間・遠方重視。パソコンは最良
E.ジェメトリック
F.ジェメトリック乱視用

×
夜間運転と遠方にこだわりのある方
ジェメトリックplusと併用を推奨 ※1。
G.ジェメトリックplus
H.ジェメトリックplus乱視用
夜間運転と遠方と近方にこだわりのある方
ジェメトリックと併用を推奨 ※1。
I.ビビティー
J.ビビティー乱視用
×
×
◎◎ 仕事や普段で色調、夜間運転は妥協したくない方。手元は眼鏡が必要 ※2。
K.ピュアシー
L.ピュアシー乱視用
×
×
◎◎ 仕事や普段で色調、夜間運転は妥協したくない方。手元は眼鏡が必要 ※2。
遠方から50cmまで良好。

※1:ジェメトリックとジェメトリックplusは併用することで、手元から遠方まで良好な視力を実現します。基本は両レンズの併用を推奨しています。
※2:ビビティー・ピュアシーは、遠方焦点距離を左右でずらすマイクロモノビジョンという方法を採用することで、近方視力を若干上げることも可能です。
詳しくお聞きになりたい方は、医師にご相談ください。

多焦点眼内レンズ使用の白内障手術 負担額

手術にかかる費用とお支払い方法➡費用は、下記①と②の合計額となります。

①手技代(保険適応):➡手術当日にお支払い
片眼で、1割負担で、約15,000円 2割負担で、約30,000円 3割負担で、約45,000円です。両眼は倍額になります。

②多焦点眼内レンズ代(自費の部分):➡手術3-4週間前までに口座振り込みでのお支払い。

多焦点眼内レンズの種類 金額
片眼 両眼
A.オデッセイ 340,000円 680,000円
B.オデッセイ  乱視用 360,000円 720,000円
C.パンオプティクス 280,000円 560,000円
D.パンオプティクス  乱視用 300,000円 600,000円
E.ジェメトリック 290,000円 580,000円
F.ジェメトリック  乱視用 310,000円 620,000円
G.ジェメトリック plus 290,000円 580,000円
H.ジェメトリック plus  乱視用 310,000円 620,000円
I.ビビティー 280,000円 560,000円
J.ビビティー  乱視用 300,000円 600,000円
K.ピュアシー 340,000円 680,000円
L.ピュアシー  乱視用 360,000円 720,000円

※振込手数料その他診療費の支払いに関して生じた費用は、全て受診者ご自身にてご負担頂きます。
※多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、基本的には両眼の手術です。
片眼手術の方は、事前に院長から説明があった通り、良い方の目にコンタクトレンズを装用頂くなどの条件があります。
※多焦点眼内レンズ代は、保険適応外(自費)にて、高額医療費制度は適応されません。

術後の視力に関して

想定した距離が見えるようになるまでの期間は、個人差があり、人によっては1か月~半年と少し時間のかかる場合もあります。